新日本プロレスのアメリカ進出計画をレスリング・オブザーバーが斬る!?:其の参

新日本プロレス 木谷高明オーナーが明らかにした新日本プロレスのアメリカ進出計画、そしてレスリング・オブザーバーによる見解の “其の参” です。今回で最後ですが、若干今までのまとめ的な感じになっています。


Wrestling Observer 2017.1.18
テリトリー制は成功しない?

1月18日(水)発売の週刊プロレス(No.1,887)で、新日本プロレス 木谷高明オーナーが “新日本プロレス成長戦略 アメリカ進出計画” の一部を公開しました。木谷オーナーはこのアメリカ進出計画でWWEが崩壊させてしまったテリトリー制を、カリフォルニアを中心に行おうと計画しています。米国に拠点を作り、ローカライズして米国人3/4と日本人を1/4の組み合わせで興行を行うというものです。
しかしレスリング・オブザーバーのデイブ・メルツァーは、テリトリー制の復活は上手くいかないと指摘しています。

まず米国のテリトリー制が崩壊してしまったのは、当時のWWFがTVで人気を博し、それにより一部の地域を除いた各地の団体は急速に人気を失い、集客面で苦戦するようになり費用対効果の悪化でテリトリー制が崩壊してしたとのこと。しかし歴史がありダスティ・ローデス、リック・フレアー、フォン・エリック、ジェリー・ローラーのようなビッグスターを抱えていた一部の地域は、崩壊するまでにある程度の時間を要しただけでした。
そしてWWFが人気を博す事になる理由の1つとして、WWFはTVの放送時間枠を買収していたからというのもあるそうです。そしてスター選手の引き抜き、これらによりWWFは全国的なメジャー規模の人気を博す事になりました。しかし現在のTV業界は当時とは変わり、高視聴率を取れるような状況でもないので、同じ事をする事は非常に難しくなっているとのこと。
さらに現在ではインターネットにより世界はより小さくなっています。観客を集めるのはTVで活躍するスター選手です。結局大きなアリーナで数万人規模の興行を成功させる為には、世界規模でのトップスターが必要になり、もうテリトリー制は古い考え方でしかないのだそうです。(※日本には独自の歴史があるので、米国とは状況が違います。)
実際メキシコでWWEが放送され始めてから、メキシコのプロレス(ルチャ・リブレ)市場は縮小する事になってしまい、WWEはメキシコで現在でも1万人以上の規模の集客に成功しています。

そして新日本プロレスも選手達のTVでの露出が増えた事が、地方での集客増につながっている状況です。カリフォルニアを拠点としても採算に合うかは怪しいです。ギャラの安い選手で、1,000人規模の集客ができれば、軌道に乗るかもしれませんが、実現できるかは分かりません。
集客で成功するには、現在米国AXSで放送している新日本プロレスを、過去の試合ではなく、最新の試合を放送するようにしたうえで、年に数回、それも大きな都市で行う必要があるそうです。それは両国大会規模でなければならないとのこと。当然タイトルマッチも必要で、それでようやく自分の街にスター選手がやってきたので見に行こうという状況になるのだそうです。しかしそれでも2,000〜5,000規模の動員ができるかは分かりません。
そしてローカライズはむしろ逆効果の可能性があるようです。WWEがNXT日本公演を行った時、中邑真輔とアスカを中心としたショーにしましたが、だからと言って日本人を3/4にしたりしはしませんでした。それは日本のWWEファンが望んでいないからです。実際WWEの日本公演で通訳を入れたり、日本語での説明があった時には、ファンはブーイングをしました。観客は英語が完全に理解できなくても、米国で行われている本物を求めていたのです。


実際米国のインディ団体では、WWEを退団したレイ・ミステリオのような選手を登場させても、1,000人も観客を集める事は難しい状況です。ROHとの合同興行で新日本プロレスのスター選手が集まっても、多くて2,000人程度(※2015年のNY大会、まだ中邑真輔もいた)しか集まりません。
集客にはブランドとスター選手が必要になります。すでに米国でも人気だった中邑真輔はいなくなってしまいましたが、ちゃんとしたTV番組があれば内藤哲也も人気を得る事が可能かもしれないとメルツァーは指摘しています。そしてケニー・オメガはすでにかなりの人気があります。しかし、それでも中邑真輔の人気に匹敵するかは分からないとのこと。

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(情報:Wrestling Observer)