新日本プロレス 木谷高明オーナーが明らかにした新日本プロレスのアメリカ進出計画、そしてレスリング・オブザーバーによる見解の “其の弐” です。
Wrestling Observer 2017.1.18
■米国内でのツアーは厳しい?
1月18日(水)発売の週刊プロレス(No.1,887)で、新日本プロレス 木谷高明オーナーが “新日本プロレス成長戦略 アメリカ進出計画” の一部を公開しました。その計画に対し、レスリング・オブザーバーのデイブ・メルツァーは、独自の見解を示しました。前回は新日本プロレスの海外からの関心、そして番組コンテンツの販売に関してでしたが、今回は米国のスポーツ・コンテンツ・バブルからケーブルTV業界の衰退。そして新日本プロレスの米国内ツアーについてです。
※参考:新日本プロレスのアメリカ進出計画をレスリング・オブザーバーが斬る!?:其の壱
スポーツ・コンテンツの放映権料が高騰しスポーツ・コンテンツ・バブルになり、それがケーブルTV会社の疲弊につながった。そしてNetflixのようなインターネット動画配信サービスの台頭により、近いうちにスポーツ・コンテンツ・バブルは崩壊する。WWEの収益はケーブルTV会社の放映権料に大きく依存しているので、WWEネットワークのテコ入れが必要になるというのが木谷オーナーの考えです。
それに対しメルツァーは、実際ケーブルTVの契約数は減少傾向にあるが、メディアが過大に報じているという面もある。そしてスポーツ・コンテンツ・バブルが弾ける可能性もあるかもしれないが、しかし昨年UFCは40億ドルでWME-IMGグループに売却され、そしてUFC買収にいくつもの大企業が少なくとも30億ドルを用意していたという話もある。それらの企業はすぐにバブルが弾けるとは考えていなかったと指摘しています。さらに、FOXスポーツとUFCの契約は2018で終了するが、その後UFCの放映権料はさらに高額になる可能性があるそうです。実際UFCは2015年〜16年は好調でした。しかしそれは一部のメガ・スター選手に依存する所が大きかった面もあるようです。そしてデモグラフィック統計でもUFCはWWEよりかなり良いもの(※おそらく広告出稿する企業側にとって)だそうで、視聴者の価値が高い事も好調な原因の1つだったとのこと。しかし今年は、幾つかの要因により視聴者数等は落ちる事も予想されているのだそうです。
一方WWEは、スマックダウンLIVEは堅調だったが、全体的には減少傾向にあります。来年にWWEとUSAネットワークとの契約が終了するので、今後の傾向を見るには来年がキーになるようです。
また木谷オーナーは、米国に現地法人を作り米国でもツアーを行う計画がある事も明らかにしています。米国でのツアーはローカライズする事を検討しており、米国人が3/4と日本人を1/4の組み合わせを考えているとか。そしてツアーでの興行でもTV収録を行い、日本の映像とあわせてコンテンツ販売していきたいのだそうです。
それに対しメルツァーは、これはうまくいかない可能性もあると指摘しています。WWEでない限り、ツアーで一定以上の観客を確保するのは難しいそうです。そのWWEでさえ通常のハウスショーの観客動員数は減少傾向です。可能性があるとすれば、むしろ大きな市場で、あまり回数を増やさずスペシャル・イベントとして年数回ぐらいの大きな大会を行う方が良いだろうとのこと。(※ROHも同じ地域にとどまってツアーはしていない。NXTはフロリダ地区でのツアーが多いが、観客動員は300人前後が多い。)
カリフォルニアを拠点にしても、定期的に興行を行う為の観客は十分に集めるのは難しい。おそらく300〜500人くらいになるのではないか。7月にカリフォルニアで2日間の大会を行うが、そこで両日3,000人以上動員できれば良い兆候ではあるが、それは最初の興行という要素があるので必ずしも参考にならないかもしれないそうです。
確かに新日本プロレスの大会は素晴らしいし、ファンは多くの関心を寄せます。しかし、米国ではまだ十分な数がいる訳では無いとのこと。それに米国人やカナダ人のスター選手を揃えても、今以上にWWEに標的にされてしまう可能性も指摘しています。おそらく米国でもまだ歴史のあり、メキシコ移民も多い事からルチャ・アンダーグラウンドの方が人を集めるには都合が良いかもしれません。ルチャ・アンダーグラウンドもハウスショーの計画があるので、新日本プロレスと比較する事は興味深いです。
ケニー・オメガとヤングバックをヘッドライナーとすれば、より多くの注目を得られるが、ヤングバックスはROHと契約しているので、新日本プロレス単独のツアーを行うのであれば、それができるかは怪しい。しかし新日本プロレスには棚橋弘至やオカダ・カズチカ、内藤哲也といったオンリーワンなスター選手を抱えています。実際新日本プロレスというブランドよりも、個々のスター選手の人気に依存している面が大きいと思われます。これはWWEよりもかなり顕著であり、新日本プロレスファンは日本人vs.外国人の試合にあまり関心を示さないように、米国で米国人の割合を増やしてもおそらく意味をなさない事になると思われるとのこと。
実際ROHに新日本プロレスの選手が来ても、人気があるのは結局日本人のスター選手だけです。ケニー・オメガを除けば、新日本プロレスの米国人はそれほどの人気があるようには見えません。
米国では現在オメガが最も人気かもしれません。しかし米国でちゃんとした番組があれば、内藤哲也も米国で人気を得る事は可能かもしれません。しかし、もし中邑真輔がまだ新日本プロレスにいれば、それはケニーや内藤よりも大きなスターであったと思われます。
300〜500人くらいの観客で、それに撮影クルーも含めたら、他よりもギャラの高い新日本プロレスでは非常に厳しいと思われます。それに試合クオリティが必ずしも、観客動員数につながるとは限りません。その主張では、WWEよりも観客を集めてみせますと言っているようなもになります。WWEであれば、英国王座トーナメントに出場した選手達で、1,000人規模の動員をできれば成功と言えるかもしれません
※:其の参はこちら
※:其の壱はこちら
(情報:Wrestling Observer)
実際オブザーバーは以前から新日本プロレスという団体には厳しめな感じがします。2015年にも米国市場を理解していないと指摘していたし。活躍した選手を評価しているといった感じ。どっちかといえばWWEはその逆かな?